
転職活動には交通費や書類作成費用がかかるだけでなく、退職後は収入も途絶えてしまいます。このような経済的な負担に直面すると、活動そのものが続けにくくなることも。
しかし、実は活用できる公的な支援制度が複数用意されているため、条件に合致すれば金銭的な不安を大幅に軽減できます。
雇用保険の基本手当で生活を支える
退職後に次の仕事を探す間、生活費の心配が付きまといます。そうした期間を支えるのが、一般に「失業保険」とも呼ばれる雇用保険の基本手当です。
この制度は、働く意思と能力があるのに就職できない状態にある方へ、求職活動を円滑に進められるよう経済的な補償を行う仕組みとなっています。
受給するために必要な条件
基本手当を受け取るには、いくつかの要件を満たさなければなりません。
まず、厚生労働省が定める基本手当の要件として、離職前の一定期間に雇用保険へ加入していたことが求められます。具体的には、自己都合退職の場合は離職日以前の2年間に被保険者期間が通算12か月以上、会社都合退職などの場合は離職日以前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上必要です。
また、ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に就職活動をしていることも条件となります。
どのくらいの金額が支給されるのか
支給額は、離職前6か月間の賃金総額を180日で割った賃金日額に、年齢と賃金に応じた給付率(おおむね50~80%)を掛けて算出します。この金額に所定給付日数を乗じた額が受け取れる総額の目安です。
給付日数は退職理由や年齢、被保険者期間によって90日から最長360日まで変動し、会社都合退職の方が自己都合よりも手厚く保護される傾向があります。
| 退職理由 | 雇用保険加入期間 | 給付日数の目安 |
|---|---|---|
| 自己都合退職 | 10年未満 | 90日 |
| 自己都合退職 | 10年以上20年未満 | 120日 |
| 自己都合退職 | 20年以上 | 150日 |
| 会社都合退職(30歳未満) | 1年以上5年未満 | 90日 |
| 会社都合退職(30歳以上45歳未満) | 5年以上10年未満 | 180日 |
| 会社都合退職(45歳以上60歳未満) | 20年以上 | 330日 |
基本手当は単なる生活費の補填にとどまらず、焦らずに自分に合った職場を探すための余裕を生み出してくれる制度といえるでしょう。
無料の職業訓練と給付金を組み合わせる
雇用保険の受給資格がない方や、収入が一定額以下の在職者でも活用できるのが、厚生労働省の求職者支援制度です。
この仕組みでは、無料の職業訓練を受講しながら月額10万円の職業訓練受講手当を受け取れるため、スキルアップと生活維持を同時に実現できます。
制度の対象となる人は
この制度を利用できるのは、ハローワークで求職の申し込みをしており、雇用保険の被保険者または受給資格者でない方です。労働の意思と能力があり、ハローワークが職業訓練などの支援が必要だと認めた場合に対象となります。
離職者だけでなく、収入が少ない在職者も条件を満たせば受講可能です。
給付金を受け取るための要件
職業訓練受講手当を受給するには、いくつかの厳格な条件があります。本人収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下であることに加え、現在住んでいる場所以外に土地・建物を所有していないことが求められます。
さらに、訓練実施日すべてに出席し(やむを得ない理由があっても8割以上の出席が必要)、世帯内で同時に給付金を受給している人がいないことも条件です。
訓練コースと期間
訓練期間は2か月から6か月で、ビジネスパソコン科、WEBデザイナー科、介護職員初任者研修科、医療事務科など多様なコースが用意されています。デジタル分野の訓練コースも拡充されており、時代に即したスキルを身につけられるでしょう。
- 基礎コース:ビジネスパソコン科、オフィスワーク科
- ITコース:WEBアプリ開発科、JAVAプログラマ育成科
- 営業・販売・事務コース:OA経理事務科、営業販売科
- 医療事務コース:医療・介護事務科、調剤事務科
- 介護福祉コース:介護職員初任者研修科、介護職員実務者研修科
- デザインコース:広告・DTPクリエーター科、WEBデザイナー科
訓練受講中は定期的にハローワークの支援を受けながら求職活動を行うため、就職への道筋が明確になります。
また、職業訓練受講手当だけでは生活費が不足する場合には、「求職者支援資金融資」という別の制度も用意されており、単身者は月額5万円、扶養家族がいる場合は月額10万円を借りることも可能です。
早期に再就職した場合の手当も活用

基本手当を受給中に早く就職が決まると、残りの給付日数に応じて「再就職手当」という一時金を受け取れる場合があります。
これは、早期再就職を促すために設けられた制度で、基本手当の残日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で安定した職業に就いた際に支給されます。
再就職手当の計算方法
残日数が所定給付日数の3分の2以上あれば基本手当日額の70%、3分の1以上であれば60%が一括で支給される仕組みです。たとえば所定給付日数が90日で基本手当日額が5,000円の場合、残日数が60日以上あれば210,000円(5,000円×70%×60日)が受け取れる計算になります。
| 残日数の割合 | 支給率 | 計算例(基本手当日額5,000円、所定給付日数90日) |
|---|---|---|
| 3分の2以上 | 70% | 5,000円×70%×60日=210,000円 |
| 3分の1以上 | 60% | 5,000円×60%×30日=90,000円 |
再就職手当は、できるだけ早く新しい職場を見つけようとする意欲を後押しする効果があります。基本手当をすべて受給するまで待つよりも、早期に就職して再就職手当を受け取るほうが、経済的にも精神的にもメリットが大きいケースは少なくありません。
制度を上手に組み合わせて活用する
転職活動中の経済的な不安を軽減するには、自分の状況に応じて複数の支援制度を組み合わせることが重要です。退職後すぐに基本手当を申請し、その間に求職者支援制度の訓練コースで新しいスキルを習得すれば、再就職の可能性が広がります。
早期に就職が決まれば再就職手当を受け取れるため、焦らず着実に活動を進められるでしょう。
支援制度を利用する際の注意点
どの制度にも申請期限や条件があるため、まずはハローワークで詳しく相談することが欠かせません。基本手当は離職票が届いてから速やかに申請しないと受給期間が短くなる恐れがあり、求職者支援制度も訓練開始日から逆算して手続きを進める必要があります。
再就職手当は就職日の翌日から1か月以内に申請しなければならず、期限を過ぎると受給できなくなります。
- 基本手当の申請は離職後速やかに行う
- 求職者支援制度の訓練コースは事前に選考がある
- 再就職手当は就職後1か月以内に申請
- ハローワークでの求職活動実績が必要な制度が多い
- 制度ごとに収入や資産の条件が異なる
転職活動は経済的な負担だけでなく、心理的なプレッシャーも伴います。しかし、公的な支援制度を適切に活用すれば、焦らずに自分に合った職場を探す時間と余裕を確保できるでしょう。